議会報告

令和3年第1回北区議会定例会 本会議最終日「予算案の組み替え動議」の反対討議

3月23日(木)

小田切かずのぶ議員

小田切かずのぶ
予算案の組み替え動議の反対討議の全文

公明党議員団を代表して、令和3年度北区一般会計予算、並びに3特別会計予算案について、賛成の立場から討論します。

昨年から続く、新型コロナウイルス感染症の影響は甚大で、特に東京都を含む1都3県では3月21日、2ヶ月半にわたる緊急事態宣言が解除になったばかりです。日本全国での感染者数は45万人を超え、死者数も8,800人を超えております。
新型コロナワクチン確保の見通しも、政府は1億回分を6月末までに調達できる、としておりますが、情勢が悪化することにより予定通り行かない可能性もあり、令和3年度は、未だコロナ禍にある状況下での財政運営のスタートとなります。

政府は、「経済財政運営と改革の基本方針2020」の中で、現下の経済財政状況について、これまで経験したことのない国難とも言うべき局面に直面したとして、この数年で思い切った改革が実行できるかどうかが、日本の未来を左右するとしております。
また、東京都は緊急事態宣言下では、飲食店等に対し営業時間短縮の要請、そして給付金の支給等を行なっている一方、感染症対策への多額の財政出動により、令和元年度末に9000億円を超えていた財政調整基金の残高は、今年度末には2000億円を割るところまで減少し、今後の都政運営への影響が懸念されています。東京都の例を見ても、充分と思われていた財政調整基金はいざという時に命綱となることを証明しています。
北区においても、北区基本計画に基づき、持続可能な行財政システムへの変革と質の高いサービス提供を実現し、中長期的な区政運営を見据え、特定目的基金への着実な積み立てを行なってきたところですが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、未曾有の税収減になることが見込まれ、今後の区政運営は状況が一変するものと考えられることから、計画事業を含む全ての事業の見直しもやむを得ないところとなっています。

令和3年度予算編成にあっては、区を取り巻く財政状況を踏まえつつ、新型コロナウイルス感染症の収束に全力を挙げ、その収束後に税収を見極めた上で、「基本計画2020」の施策実現に向けた取り組みを進めることを基本としています。
このような財政環境下にあっても、確実なワクチン接種の実施など、万全な医療提供体制を確保するとともに、中小企業の事業継続支援のほか、生活困窮者への対応などに積極的に取り組み、子育て支援の充実や教育環境の確保、デジタル化の推進など、未来を見据えた取組みを中心に新規事業の構築やレベルアップを図るとしています。

特に、これまで予算要望や本会議での質問で公明党議員団が求めて参りました、地震・風水害対策、高齢者の就労支援、暗所視支援眼鏡の日常生活用具給付等事業への対象品目追加などの障がい者支援、学童クラブ・保育園の定員拡大、多胎児支援や産後ケア事業の拡充、私立幼稚園の保育料補助拡充、バリアフリー化の推進、シティプロモーション推進などが計上されており、高く評価します。
また、予算特別委員会の中でも、我が会派の宮島委員が求めた、防災備蓄品を活用した生理用品の無償配布の要望に対して、区長より、実現を決定する答弁をいただいた事も高く評価するものであります。

北区にとって、新庁舎建設、魅力ある公園の整備、王子、赤羽、十条の駅周辺町づくり、多文化共生社会への取り組み、少子高齢化対策などが今後も課題となり、そのための施策の推進への財源確保が大きな命題となっております。
厳しい財政見通しの中ではありますが、重要性・緊急性等の高い事業を中心に、限られた資源を各分野に重点的に配分し、この困難を乗り越え、未来を切り開いていく行政を期待します。

そして、今回の予算特別委員会で会派として申し上げました、以下の課題、要望につきまして、実現に向けた努力を求めます。

  1. 災害時の緊急輸送の協力体制を締結しているタクシー・バス事業者など区内事業者を、移動困難者や医師の新型コロナワクチン接種に関する移動手段として、またワクチン運搬手段として利活用すること
  2. コロナ禍の影響を受ける区民の生活を応援する30%プレミアム付き区内共通商品券の発行を行うこと
  3. コロナ禍における女性の負担軽減の為、必要とする人に生理用品の無償配布を速やかに行うこと
  4. 桐ヶ丘高校等、災害時協定のある区有施設外の避難施設について、地域の実情に合わせた利用が出来るよう準備を進めること
  5. SDGsの「誰1人取り残さない社会」の実現に向け、パートナーシップ制度を導入すること
  6. 子育て世帯への給付金などの支援対象を拡充すること
  7. 東京都立赤羽北桜高等学校と連携して保育、福祉の人材確保を行うこと
  8. ゼロカーボンシティの表明を早急に行い、再生可能エネルギーの活用を積極的に推進すること
  9. 旧赤羽台東小学校跡地とUR都市機構用地との一体活用等について、URと連携を強め、都市計画に基づいたリーダーシップを取ると共に、沢山の避難者の安全な避難経路となりうる、バリアフリー対策を進めること
  10. 幼児教育・保育無償化から除外されていた施設の子どもに対しても、幼児1人当たり一律に月額2万円を給付すること

以上を改めて要望し、令和3年度北区一般会計予算案並びに3特別会計予算案に賛成致します。

次に、日本共産党北区議団、新社会党所属議員が提出した、「第21号議案 令和3年度東京都北区一般会計予算」、「第22号議案 令和3年度東京都北区国民健康保険事業会計予算」及び「第23号議案 令和3年度東京都北区介護保険会計予算」の組み替えを求める動議に反対する立場から、討論します。

令和3年度予算では、新型コロナ感染症対策を最優先に、経済活動や区民生活を支援する予算を編成しています。
また、新たな時代への要請に応える為、デジタル化を推進し、区民の利便性の向上を図る、としております。
このほか、一定の財源を確保した上で、防災・減災対策、子育て支援や地域福祉の充実、教育環境の確保など、3つの優先課題に積極的に対応するとともに、区の魅力を高める取組みなどに、限られた財源を重点配分し、新規事業の構築やレベルアップを図っています。

感染症対策については、独自の給付、中小事業者の事業継続支援や医療機関への緊急的な支援など、様々な対策を講じています。また、国においては、コロナ禍で困窮する所得の低い子育て世帯への給付金の支給が対象を拡充して行われます。さらに、緊急小口資金等の申請受付が4月以降も継続されます。
新年度、一般会計の予算規模は、1,539億8,200万円で、前年度に比べ1.1%の減となり、2年連続の減、歳入は特別区税、特別区交付金等の減少で「マイナス24億円」にもなります。それに伴い区当局は、事業の繰延べや、休止等、断腸の思いで19億円の財源を捻出している状況です。
 また、新型コロナウイルス感染症の収束時期の見通しも難しく、専門家によると経済状況がコロナ前の水準に戻るのは2023年とも2024年とも言われており、景気の先行きも不透明な情勢にあります。しばらく厳しい財政環境が続くと見るのが当然で、今まで以上に慎重な判断が求められます。

予算組み替え動議では、財政調整基金8.6億円余を活用した予算の組み替えを求めております。
財政調整基金は、経済事情の変動による財源不足の補填や、災害の際に活用する重要な基金であります。現在の新型コロナウイルス感染症による景気の動向も不透明であり、また3月20日の夕方にも宮城県沖を震源とする大きな地震がありましたが、北区での大規模災害もいつ起こるか予断を許さない状況です。その時に基金の積み立てが十分ではなかったので、何も出来ませんでした、では済まされません。

現在の北区は決して恵まれた財政状況にはありません。標準財政規模や区の行政目的が異なるため、必ずしも単純比較はできませんが、実際に23区では、財政調整基金の残高は平均290億円程度、また北区と人口規模等が近い区でも200億円を上回っており、これは、各区が、いかに財政調整基金を大事に積み立てて、慎重に取り崩しているかを証明しています。
北区としても、予算委員会での答弁にもあった通り、リーマンショックの当時の状況を踏まえて、財政調整基金は安定的財政運営の為に、年間70億円かける3年分程度の、「最低でも200億円」はないと、十分な基金残高とは言えません。
朝日新聞での報道にありました財政調整基金の区民一人当たり残高は、北区は2019年度末と比較して2021年度末の予定残高は「半減」しており、23区での区民一人当たり残高は「ワースト5に入る状況」が現実です。
北区では、それでも未曾有の緊急事態に対応するために、新年度に財政調整基金を78億円取り崩し、令和3年度末には106億円と減少する見込みです。

現在の状況下では、財政調整基金は未だ十分でないのが、区の現況です。
「経済あっての財政」です。
それを簡単に取り崩せというのは、とんだ暴論であると言わざるを得ません。

必要な基金を取り崩して区民の生活に、ということは、聞こえはいいようですが、実は区民の生活を破綻に追い込むものです。財政が破綻または危機的状況になっている自治体はどうなっているでしょうか。
まず区民サービスの削減に始まり、増税、公共施設の廃止、利用料の値上げ、職員の削減等、大変な状況になります。
歳入が減り、事業も見直し、基金の積み立ても行わない中、「基金を取り崩して新たな事業を行う」などということは、到底考えられない状況です。誰が見てもおかしいと思うのではないでしょうか。私たちは、区民の生活を破綻に追い込む組み替え動議には到底賛同できません。断固、反対します。

また、予算組み替え動議を出されるのであれば、是非、「責任感のある提案」をお願いしたいところです。財政調整基金の取り崩し以前に、本年、予算で区当局が苦渋の選択で事業の繰延や休止等で19億円の財源を捻出しているように、今ある中で、まずどこがこれ以上削れるのか、それをご提案いただきたいものです。
区の執行部、財政当局と各所管が半年以上もかけて綿密に打ち合わせてきた予算を、いとも簡単に、財政調整基金で賄えばよいではないか、と簡単に言ってしまう事に対して、どう考えているのでしょうか。

年度によって生じる財政の不均衡を調整するため、そして、将来必ず発生する財産の維持や事業費のために積み立てられているのが基金です。家計に置き換えれば貯金と同義です。将来設計もなく勝手に使ってしまったら、人生設計はおぼつきません。
目的のため、また将来設計のために貯蓄している、大事な基金の取り崩しによって、臨時的になんでも実現できると考えるのは、今月使えるお金が足りなくなっても、貯金を使えばお金はまだまだ使えるではないか、と言っているようなもので、責任ある政党の発言としてはいかがなものか、と強く申し上げさせていただきます。

そもそも、本組み換え動議に出ている項目の中には既に協議が進んでいるものや、近年実施に向けた対応が予定されているものもあり、必要に応じて補正予算等で組んでいくべきものもあります。

例えばワクチン接種協力病院への補助増額などは、本会議、また予算委員会の各会派、また委員からの質問への答弁でも、「万全な接種体制を確保するためには、基本型接種施設等での接種を可能とする医療機関の協力が不可欠であり、既に、医療機関への補助については医師会と協議しており、補助額の増額等を行うことで対応する」とされており、わざわざ予算を組み替える必要性がないことは明白であり、的外れな提案と言わざるを得ません。
大規模災害、そして目下の新型コロナ対策は、日々状況が変化し、必要な施策も変化していくものです。こういった情勢に随時、令和3年度補正予算等で対応していくべきものであります。
渋沢栄一翁は、「数字算出の確固たる見通しと、裏付けのない事業は必ず失敗する」と述べています。この7年、毎年、予算組み替え動議が提出されています。
しかしながら、政策の実現までには、必要性の協議に始まり、確固たる見通しや裏付け、持続可能性の調整、関係部局の協議、そして予算の確保、と数多くの苦労があります。「要望したから」、「動議を出したから」、政策が実現した、というのではあまりにも無責任である、と申し上げます。
以上、公明党議員団は、「第21号議案 令和3年度東京都北区一般会計予算」、「第22号議案 令和3年度東京都北区国民健康保険事業会計予算」及び「第23号議案 令和3年度東京都北区介護保険会計予算」の組み替えを求める動議について、反対を表明し、討論を終わります。ご静聴ありがとうございました。

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